どうも、何でも無いようなことが幸せだったと思う、ぷにたま(@raigar)です。
コロナ禍の中、異例の静かな年末年始を過ごして迎えた2021年1月7日、1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)を対象に緊急事態宣言が出されました。
政府は7日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県に緊急事態宣言の発令を決める。知事は飲食店に午後8時までの時短営業を要請し、応じない店舗を公表できるようになる。応じた飲食店に出す協力金は1店舗あたり1日最大4万円から同6万円に増やす。
(引用:日本経済新聞)
これにより、時短営業要請に応じた飲食店に対しては、協力金が支払われるわけですが、
実は多くのライブハウスもこの協力金を受給することが出来るんです。
なぜなら、多くのライブハウスが飲食店であるからです。
「ライブハウスが飲食店なの?」って疑問に思う方もいるかと思いますが、
協力金がもらえる理由の答えは、ライブハウスのワンドリンク制にあります。
ライブハウスに行ったことある人なら、「入場時に1ドリンク代500円かかりまーす。準備お願いします!」のような台詞を聞いたことありますよね。
ライブハウスに初めて来た時は、
「なんでチケット代と別にドリンク代が必要なの?」
「ドリンク代って高くない??」
なんて疑問に思った人も少なくないと思います。
最近では、増税の影響なのか、1ドリンク600円だったりするところもありますよね。
ライブハウスに慣れてる人も、ドリンク代がかかる事は理解してても、
なぜ1ドリンク制が必要であるかまでは知らないのではないでしょうか。
今回は、ライブハウスが1ドリンク制である3つの理由を解説してみようと思います。
①飲食店営業許可を取っているから
まず、比較的小規模(収容人数1000人規模ぐらいまで)のライブハウスのほとんどは、飲食店営業許可を取って営業しています。
飲食店営業許可を取っている = 飲食店
では、なぜライブハウスは飲食店の営業許可証を取って、ライブ会場を運営しているのでしょうか。
それは、「規模の小さいライブハウスが営業許可を取る為の一番簡単な方法」だからです。
ライブハウスは、本来、「興行場」というものにあたりますが、営業許可のおりにくい興行場法の適用を避け、許可がおりやすい「飲食店」として営業したいというのが実態なんです。
「興行場」の許可を得るには、いくつかの要件があり、運営上守らなければならない決まりもあり、飲食店として営業する方が都合が良いというわけなんですよね。
興行場とは・・・
○定義
興行場は「映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設」と定義されているが、これらの営業を行う場合には興行場法に基づき都道府県知事の許可を得なければならない。
○営業の許可
・業として興行場を経営するものは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可を受ける必要がある。
・興行場の許可は、都道府県の条例で定める構造設備基準に従っていなければならない。
・興行場の運営は、都道府県の条例で定める換気、照明、防湿、清潔等の衛生基準に従っていなければならない。
(引用:厚生労働省)
そんな理由から多くのライブハウスは飲食店扱いであり、飲食店営業をする以上は、飲食物を提供しなければならないというわけなんです。
飲食をしない客が多いと興行場とみなされて無許可営業になる恐れがあるので、
ライブハウスとしては、お客さん全員に飲食物の提供をするための手段として、
入場時の1ドリンク制を採用し、飲食店営業をしているという体裁を取っています。
②バーカウンターを設置・維持したいから
ライブハウスが飲食店として営業する上では、施設基準というものがあるのですが、その中で、冷蔵設備・洗浄設備・給湯設備の設置が必須になっています。
この必須設備を一番簡単に満たすための形態がバーカウンターというわけです。
また、飲食店では、調理場と客席を区切る必要もあり、このバーカウンターが調理場と客席を区切るための役割も果たしています。
もちろん飲食店営業許可を取る為には、他にも様々な要項があるのですが、
施設基準を満たし、かつ調理場と客席を区切り、しかも飲み物を置くテーブルにもなる、そんな画期的な形態がバーカウンターです。
1ドリンク制は、飲食店営業許可を維持する為だけでなく、バーカウンター等の設備を維持する為にも、一役買っているというわけですね。
③収益を確保したいから
いやらしい話ですが、収益を確保するための大事な役割を果たしているのが、1ドリンク制です。
例えば、1,000人規模のライブハウスが満員の場合で、1ドリンク代500円・ドリンク原価が100円としましょう。
(1,000人×500円)-(1,000人×100円)
=500,000円 - 100,000円
=400,000円(収益)
その場合、40万円が収益として確保できるわけです。
もちろん、建前上は飲食店営業とはいえ、ライブハウスの収益の大部分を占めるのは、チケット代・ホールレンタル代ではありますが、
チケット代を毎回必ず回収できるとは限らないわけで、
出演アーティストが決まらない・お客さんが埋まらない・急に中止になる(災害・今なら新型コロナもありますよね、、)なんてことも当然あるわけです。
そんな場合でも1ドリンク代の収益があれば、足りない売上の補填ができ、ライブハウスを維持するのに役立っているんです。
場所にもよりますが、ライブハウスの運営費は、最低でも200~250万円近くは毎月かかると言われています。
維持していくだけでも、かなりの費用負担が伴うわけなんですよね、、、
・アントレランド「ライブハウスの開業資金と調達方法」
・まだまだ音楽はこれからだ!「ライブハウス事情について考える ~2.調査・分析 お金編~」
また、ドリンク代で収益を確保出来れば、更なる設備投資への資金とすることもできます。
ライブハウスは現状維持するだけでも、機材の修理や交換など多くのお金がかかりますが、今使ってる機材をランクアップさせる為に資金を使うことが出来れば、より良い環境を作ることができます。
音響・照明機材だけではなく、例えばコインロッカーを増やしたり、分煙可能な喫煙所を設置したり、トイレを温水洗浄便座に変えたりなど、
アーティストにとってもお客さんにとっても、より居心地の良い空間を作る為には、1ドリンク制が大事だということなんです。
まとめ
1ドリンク制は、ライブハウスを維持するための大事な役割を担っています。
個人的には、収益を確保するためにも、2ドリンク制にすることもやむ無しではないかと考えています。
今、ライブハウスの経営は、非常に苦しい状況です。
実際、2020年には老舗のライブハウスでも閉店を余儀なくされるなど、相次いでライブハウスが減っていっています。
私は、こんな時代だからこそ、音楽の力を信じ、音楽を絶やさないことが大事だと感じています。
ライブハウスがそこに在り続けること、それが本当に大切な事なんです。
時短協力金や雇用調整助成金を活用するなど、とにかくライブハウスが生き延びてくれることを願っています。